

【日本語教員試験対策】「日本語教育の参照枠」の「全体的な尺度」とは?日本語能力の6レベルを分かりやすくご紹介!
概要
今回は、日本語のレベルを判断する際の基準として役立つ「日本語教育の参照枠」の中から、最もおおまかな尺度である「全体的な尺度」について解説します。「日本語のレベルって、どうやって測るの?」「初級・中級などの判断基準は?」一口に「初級」「中級」などと言っても、レベルの定義は実はあいまい。そんなときに活用できるのが、今回解説する「全体的な尺度」です。「日本語教員試験」にも出てくる重要キーワードで、試験合格だけでなく、教師デビューした後も広く活用できるものですので、理解を深めてみてください。
全体的な尺度とは?
今回は「全体的な尺度」についてですが、まずは全体的な尺度の位置づけを理解するために、「日本語教育の参照枠」というものについて解説します。
日本語のレベルについてどう判断するかを考えるとき、判断基準になるものが必要ですよね。同じ時間数勉強していても、周りの環境や学習頻度、使用頻度によって熟達度は違いますし、「~語ができる」という感覚は主観的なものです。そこで参照できるものが、「日本語教育の参照枠」というものです。
これは令和3年に文科省が取りまとめたもので、「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)」を参考に、日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容・方法を明らかにし、外国人等が適切な日本語教育を継続的に受けられるようにするため、日本語教育に関わる全ての者が参照できる日本語学習、教授、評価のための枠組み」です。
簡単に言うと、「何がどれくらいできたら初級・中級・上級と言えるのか」というような、日本語教育における言語能力のレベルについての共通認識を作りましょう、というのがこの「参照枠」の目的です。
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠/セファール:Common European Framework of Reference for Languages)については別の記事でも紹介していますが、これはヨーロッパを中心に用いられている、外国語の能力を示す指標のことです。
「日本語教育の参照枠」は、このCEFRを参考に、日本語教育で使えるようにアレンジし最適化したものと言えます。
さて、この日本語教育の参照枠では抽象的なものから具体的なものまで、3つの指標で日本語能力のレベル分けが示されているのですが、それが「全体的な尺度」「言語活動別の熟達度」「言語能力記述文」です。
「全体的な尺度」は、日本語能力の熟達度について大きく6段階で示したものです。「言語活動別の熟達度」ではそれを細かくし、聞く・読む・話す(やりとり)・話す(発表)・書くの5つの技能別に6段階で示しています。さらに、「言語能力記述文(Can do)」では、具体的に各レベルで何ができるのかがCan-do Statementsで示されています。Can-do Statements(キャンドゥ・ステイトメント:例示的能力記述文)とは、言語熟達度を「~できる」という文で示したものでしたね。
日本語学校のクラスや教科書では「初級前半・初級後半・初中級・中級・上級・超級」などと分けて呼ぶのが一般的ですが、「全体的な尺度」では、A1~C2までの6段階で分けています。
それでは、それぞれのレベルの内容を見ていきましょう。
①A1~A2
A1~A2レベルはいわゆる「初級」にあたるもので、全体的な尺度においては「基礎段階の言語学習者」と位置づけられています。以下、それぞれのレベルがどのように定義されているか見てみましょう。
【A1レベル】
・具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることもできる。
・自分や他人を紹介することができ、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりできる。
・もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。
【A2レベル】
・ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
・簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる。
・自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。
②B1~B2
基礎段階を終えると、次の段階としてB1~B2レベルがあります。こちらは「自立した言語使用者」と位置づけられます。標準的な内容、話し方であれば、手助けがなくともある程度自立的に日本語が使用できるレベルです。
【B1レベル】
・仕事、学校、娯楽で普段出会うような身近な話題について、共通語による話し方であれば、主要点を理解できる。
・その言葉が話されている地域を旅行しているときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。
・身近で個人的にも関心のある話題について、単純な方法で結びつけられた、脈絡のあるテクストを作ることができる。
・経験、出来事、夢、希望、野心を説明し、意見や計画の理由、説明を短く述べることができる。
【B2レベル】
・自分の専門分野の技術的な議論も含めて、具体的な話題でも抽象的な話題でも複雑なテクストの主要な内容を理解できる。
・お互いに緊張しないで熟達した日本語話者とやり取りができるくらい流暢かつ自然である。
・かなり広汎な範囲の話題について、明確で詳細なテクストを作ることができ、さまざまな選択肢について、明確で詳細なテクストを作ることができ、さまざまな選択肢について長所や短所を示しながら自己の視点を説明できる。
③C1~C2
C1~C2レベルは「熟達した言語使用者」と位置付けられ、この段階になると高度な理解・産出力が求め られます。
【C1レベル】
・いろいろな種類の高度な内容のかなり長いテクストを理解することができ、含意を把握できる。
・言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。
・社会的、学問的、職業上の目的に応じた、柔軟な、しかも効果的な言葉遣いができる。
・複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細なテクストを作ることができる。その際テクストを構成する字句や接続表現、結束表現の用法をマスターしていることがうかがえる。
【C2レベル】
・聞いたり、読んだりしたほぼ全てのものを容易に理解することができる。
・いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫 した方法で再構成できる。
・自然に、流暢かつ正確に自己表現ができ、非常 に複雑な状況でも細かい意味の違い、区別を表現できる。
日本語教員試験で出題される問題パターン!
「日本語教育の参照枠」に関する問題は、日本語教員試験でも出ることが予想される重要ポイントです。
試験では「全体的な尺度」を技能別に分けた「言語活動別の熟達度」の記述と、レベル(A1、B1など)の組み合わせが4つ示され、「不適当なものはどれか?」というパターンでの出題が予想されます。
上で紹介した各レベルの能力記述文と、それらが該当するレベルを整理し、覚えておくと良いでしょう。一字一句暗記せずとも、各レベルで「どんな条件下でどんなことがどの程度できるのか」という言語能力のイメージを持っておくと、解きやすくなるのではないでしょうか。
まとめ
今回は「全体的な尺度」とその内容について解説してきました。学習者のレベルを知りたいとき、テストなどで評価をするとき、教材の分析やコースの目標を決めるときなど、あらゆる場面で参照できる指標です。ぜひ試験対策だけにとどまらず、その先の活用につなげていただけたらと思います。
参考・引用

インプット仮説(i+1)を改めて考えてみよう
今回は、インプット仮説(i+1)を改めて考えてみようと思います。まず、インプット仮説(i+1)が何かについて解説し、問題点について説明していきます。さらに、実際の授業でやっている例を紹介します。その後、i+1やインプット仮説というワードが日本語教育能力検定試験に出るかということについても述べていきます。