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必須の50項目とは 「日本語教師養成講座で必ず指導することが定められている50個の教育内容」

目次

概要

登録日本語教員になるための学習内容である「必須の50項目」をご存じでしょうか。これは登録日本語教員の養成課程で必ず学ばなければならない学習範囲を定めたもので、この内容に準拠した養成課程を受講しているかどうかが、その後の資格取得に影響することになります。今回はこの「必須の50項目」の設定の経緯や学習内容、養成課程を選ぶ際に知っておきたいポイントを解説します。

必須の50項目とは 日本語教師養成講座で学ぶ内容をわかりやすく解説

日本語教師を目指すための養成講座では、日本語をはじめとする言語についての知識だけでなく、教師として教えるのに必要なさまざまな知識・スキルを学びます。日本語教師になるために最低限学んでおかなければならない必要な知識を体系化した「日本語教師の必修カリキュラム」のようなもの、それが「必須の50項目」です。

「必須の50項目」には、言語学、言語教育学、教育学、経済や外交・歴史、異文化コミュニケーションの知識、心理学、社会学といった幅広い学問分野が含まれています。

日本語教育は非母語話者を対象とした教育分野のため、小中学校国語などで扱う日本語とは教育観や方法論が異なります。また、対象者も子どもから社会人、高齢者まで幅広いため、学習者の背景によっても異なる教育的アプローチが取られます。さらに、直接人に関わって教える部分だけでなく、どのようにカリキュラムや教材、試験を作るのか、その妥当性についてどのように評価を行うのかといった授業以外の部分も教師に必要なスキルです。こうした広い範囲を網羅する「必須の50項目」は、大きく「社会・文化」「教育」「言語」の3つの領域と、その下位分類である5つの分野で構成されています。

 

5つの分野とは、

1)社会・文化・地域

2)言語と社会 

3)言語と心理 

4)言語と教育 

5)言語 

というものです。

「社会・文化・地域」「言語と社会」の分野ではまず、日本語教育の歴史や外交関係、世界情勢の変遷などの社会的背景を学びます。さらに、人間にとって言語がどのような機能を持っているのか、ことばが社会の中でどのような役割を果たしているのかなど、社会的・人文学的な視点から言語を捉え直す学習を行います。そして「言語と心理」「言語と教育」では、人の言語学習・適応過程で起こる心理的なプロセスや、教育理論を学びます。「言語」の分野では、言語学や音声学、日本語という言語そのものを深堀りしていき、学習者が日本語を学ぶ際にどのように感じるか、それをどのように教えていくかなどを学んでいきます。

 

日本語教育は異なる教育を受けてきた人、異なる政治や歴史、文化を経験している人に対する教育です。教えている中でどういった問題が起こる可能性があるのか、また、それを解決するにはどうしたらいいか考える資質やスキルが日本語教師には欠かせません。

これらの内容を学ぶことで、単に言葉の意味や使い方を伝える教師になるのではなく、学習者や教師自身が国際社会の中で日本語を使う自分のあり方を模索し、その役割を考えていけるようになることを目指しているわけです。

 

なぜ「必須の50項目」が定められたのか? 制度改正の背景と目的

日本語教師は長らく民間の資格という位置づけでしたが、在留外国人・日本語学習者の増加や多文化共生の必要性の高まりとともに、日本語教師の質の担保を要請する動きが高まりました。それまで日本語教師の資格は「420時間の養成講座修了」「日本語教育能力検定試験合格」「大学等での日本語教育専攻・副専攻の修了」を基準に認定されていましたが、国としてより統一された指針・制度が必要であるということから、「登録日本語教員」という国家資格の新設と、その養成課程の再整備が進められることになったのです。

2019年3月に文化審議会国語分科会が「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」を発表し、この中で日本語教育の現状と今後の体制に求められる日本語教師の資質が議論され、さらに日本語教師の養成講座で最低限学習すべき内容をまとめた「必須の50項目」が示されました。それまでの旧「420時間養成講座」や大学、日本語教育能力試験で扱われていた知識と、日本語学習者の増加している現状を踏まえた知識や、それまで必修ではなかった「教育実習」の内容が追加され、体系化されることとなりました。

新制度の下では、この必須の50項目に準拠した養成課程を受講することが、資格の認定に影響を及ぼします。現在、新制度が始まってからまだ約1年ということで、多くの日本語教師養成機関は新制度に合った教育内容に変えていく過渡期にあります。

これから日本語教師を目指す皆さんは、この「必須の50項目」を満たし認定を受けた養成課程を受けることで、国家資格「登録日本語教員」の認定試験である「日本語教員試験」において、基礎試験の免除を受けることができるようになりますので、これから養成講座を探すという方は、その点に注意していただければと思います。

「必須の50項目」で学ぶ内容とは? 3領域・5分野の学習テーマを紹介

では次に、この「必須の50項目」には実際にどんな内容が含まれているのか、学習内容を見てみましょう。以下の表で、必須の50項目の内容を簡単にまとめてみました。

※文科省HP行政資料を参考に作成

引用元:開会挨拶・行政説明「登録日本語教員制度等について」

 

「社会・文化」「教育」「言語」の3つの領域は緩やかにつながっています。先ほども説明したこの3つの領域と5つの分野についてまとめます。

 

【3つの領域】

1)社会・文化に関わる領域

人が言語を扱ってきた文脈について、歴史や外交などの面と、人と人のつながりやコミュニケーション、心理的発達や人間関係の調整における言語の機能に焦点を当てて学習する

2)教育に関わる領域

ことばの学びのプロセスに関する理論や、言語教育がどのように進められるのか、その方法やカリキュラム・教材・試験などの教育資源や情報の扱い方を学ぶ

3)言語に関わる領域

文字表記、語彙・文法体系など言語そのものの仕組みや言語学のこれまでの研究、言語の運用に関わる理解・対人関係などの社会的能力に焦点を当てて学習する

 

【5つの分野】

1)社会・文化・地域 

世界情勢と日本の立ち位置、日本語教育に関する現在の制度や施策など、大きい社会的な文脈を学ぶ

2)言語と社会

社会の中で人間がどのように言語を使用しているのか、言語(表情やジェスチャーなどの非言語も含む)が人間関係にどのように影響しているのかなど言語の社会的な側面を学ぶ

3)言語と心理

言語学習の動機や、学習・適応過程で起こる心理的な変化などの側面を学ぶ

4)言語と教育

実際の言語教育における手法、言語習得理論や教材・著作権に関する知識、評価の方法などを学ぶ

5)言語

一般言語学、音声学に加え、日本語の語彙・文法・音声体系や文字表記など、言語そのものに関わる知識を扱う

 

いかがでしょうか。特に関心のありそうな分野は見つかりましたか?学習範囲は多岐に渡りますが、単に資格試験の勉強のためだけでなく、国や言語、社会や心理など、誰にとっても関係がある内容になっていますので、自己研鑽の学びとしても大変興味深い内容ではないかと思います。

後に説明する「登録日本語教員試験」でも、この必須の50項目の内容が試験範囲となります。各分野の具体的な内容についてさらに詳しく知りたい場合は、日本語教師養成講座の説明会などでテキストなどを見たり、実際の過去問題などを調べてみるとより詳しくイメージができるかと思います。

試験の学習範囲については以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご覧下さい。

試験ルートで合格する方法

 

登録日本語教員養成機関・登録実践研修機関を選ぶ理由

登録日本語教員の資格認定には、国家試験である「日本語教員試験」で、基礎試験と応用試験、実践研修の3つに合格、修了することが必要です。

基礎試験では必須の50項目で学ぶ理論的な知識が問われ、応用試験では実際の現場に応用する場面を想定した縦断的な知識が問われます。さらにこの基礎試験、応用試験に加えて「実践研修」といういわゆる模擬授業や教壇実習があり、それを修了することではじめて資格が取得できます。

 

資格取得の方法には「試験ルート」「養成機関ルート」の2つがあります。試験ルートは上記の3つの試験を順に受験し合格する方法で、主に独学で学んで試験を受ける場合が該当します。一方、養成機関ルートというのは日本語教師養成講座を受講し、試験の一部の免除を受けて、資格を取得する方法です。

養成機関ルートで登録日本語教員を目指す場合、「登録日本語教員養成機関」の認定を受けている機関・講座を受講することで、基礎試験の免除を受けることができます。「登録日本語教員養成機関」は必須の50項目の内容に沿ったカリキュラムの養成課程を持っていると認定されていて、「基礎試験」「応用試験」で出題される内容を学べる機関のことです。「登録実践研修機関」というのは、「基礎試験」「応用試験」に合格した後等に受講する「実践研修」を行う機関として認められた機関のことです。

この認定を受けていない養成講座で学んでも、養成機関ルートの受験資格として認められず、基礎試験の免除は適用されません。実践研修においても同様です。

 

文部科学省の認定・登録を受けているということは、国が定めるカリキュラムの要件を満たしている証拠になりますので、日本語教師として必要な内容を網羅しているということができます。認定を受けた養成講座を修了すれば、基礎試験が免除になり、応用試験のみの受験となります。また、「登録実践研修機関」の認定も受けている機関なら、そこで実践研修も合わせて受けることができます。

 

ここまでの内容を踏まえ、養成機関ルートを考えている場合の資格取得までの道のりを整理すると、大きく以下の3パターンに分けられます。

1)「登録日本語教員養成機関」「登録実践研修機関」いずれの認定も受けていない機関の場合

→基礎試験、応用試験を受験し、別途「登録実践研修機関」として登録を受けた機関で実践研修を受け、修了する

2)「登録日本語教員養成機関」の認定を受けている機関の場合

→基礎試験が免除となり、応用試験を受験。合格したら「登録実践研修機関」で実践研修を受け、修了する

3)「登録日本語教員養成機関」「登録実践研修機関」両方の認定を受けている機関の場合

→基礎試験が免除となり、応用試験を受験。実践研修は試験の合否に関わらず、養成講座と一体的に受講できる。

 

なお、試験ルートで合格を目指す場合には、

独学あるいは養成講座等で学習し基礎試験を受験

→合格後、応用試験を受験

→合格後、「登録実践研修機関」で実践研修を受け、修了

という流れになります。

2025年10月現在、まだ新制度が始まって日が浅く、多くの日本語教師養成講座が登録を受けるために動いており、旧420時間養成講座と新制度下で認定を受けた講座が共存している状態です。これから養成講座を探すという場合は、両方の認定を受けている機関を選ぶことで、制度を最大限に活用することができます。

まとめ

登録日本語教員の資格やそれに伴う養成機関の認定制度は作られてからまだ日が浅く、日本語教師養成講座は今まさに過渡期にあります。これから日本語教師を目指す皆さんには新制度をよく理解していただき、どのようなルートを取るのかご判断いただければと思います。

TCJは「登録日本語教員養成機関」「登録実践研修機関」の両方として認定されていますので、上記の養成機関ルートの(3)のパターンでご受講いただくことができます。これから登録日本語教員を目指したいと考えているという方はぜひ、TCJの養成講座をご検討ください。

TCJコラムでは、こうした登録日本語教員の資格試験に関する最新情報や日本語教師のお仕事事情について発信しています。日本語教師になるための準備・情報収集に役立つ知識をお伝えしていきますので、ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね。

参考・引用

日本語教員試験対策が必要な方へ

TCJ日本語教師養成講座では、日本語教員試験の学習に特化したeラーニング教材を開発しました。

令和7年度日本語教員試験での合格率(当社調べ)

・試験ルートの合格率59.7% (全国平均35.9%)

・養成機関ルートの合格率75%(全国平均 69.2%)

 

試験ルートの合格率が全国平均より約20ポイント増となっています。

 

【こんな方におススメ】

・試験ルートで登録・日本語教員の資格取得を検討している方

・現在日本語教師として活躍中で経過措置に国家資格への移行が必要な方

・養成講座受講中で国家試験対策に不安がある方

 

詳しくは公式サイトでご確認ください。↓のリンクをクリック。

この記事の筆者
TCJ・コラム執筆者写真
TCJ日本語講座 非常勤講師
大野 綾香
大学で日本語教育を学んだのち、日本語教育能力試験に合格。日本語学校で留学生の大学受験指導・プライベートレッスン、教材出版等を経験後、2023年よりTCJにて留学コース・ビジネスパーソンのプライベートレッスンを担当。好きな分野は地域日本語教育、音声学。

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