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日本語教育現場におけるレアリアの効果的な使い方とは?

目次

レアリアとは何か。

レアリア”realia”とは、教育の補助として使われる「本当の物」のことです。また、千野(1986)によると、レアリアはチェコ語で reálie で、「ある時期の生活や文芸諾作品など に特徴的な細かい事実や具体的なデータ」であるとしています。

そして、『外国語教育学大辞典』では、「実物教材は、視覚教材の1つのタイプであり、硬貨から食べ物に至るまで実際に世の中にあるものを指し、言語教育で用いられる」としています。このように、国内の日本語学校のような、直接教授法の初級の早い段階において、導入やロールプレイなどで用いられることが多いです。

よく用いられるものとして、新聞記事、テレビ番組、メニューなどがあります。

 

岩崎先生も、Youtubeチャンネルにて、先生のお気に入りのレアリアを紹介しています。

なぜ、レアリアを使うと効果的なのか。

ここでは、実際の授業におけるレアリアの活用例を見ていきます。内藤(2014)では、「日本事情」の授業の中で、「着物」をレアリアとして使用している理由として、「日本語力に差がある「日本事情」のクラスでは、話題を共有するための補助としてレアリアの効果は大きい」と述べています。そして、レアリアの授業における展開例として以下のような記載があります。

【展開例1】

2種類の着物を提示

→実際に触ってみることにより、素材の違いを認識する。

「単衣の着物」と「袷の着物」との違いを提示  

→着物が、日本の気候をふまえた特徴を持つことを説明する。

「織りの着物」と「染めの着物」との違いを提示

→着物が、年齢や社会階層、着る場への敬意などを象徴するものであることを説明する。

 

このように、内藤(2014)では、「着物」を教材として利用するにあたっての展開例をいくつか紹介しています。そして、初級に限らず、「上級レベルの日本語力を持った履修者のクラスであれば、それぞれの展開例に時間をかけ、「レアリアの提示→教員による説明→履修者によるディスカッション→意見文の執筆」といったサイクルで、授業を組み立てることも可能である。」と語られています。

見直されるレアリア

最近の日本語の授業の中では、パワーポイント(PPT)の活用が最も多く見られます。多くの教師がパワーポイントが使える環境であれば、プロジェクターやスライドではなく、パワーポイントを選択するようになってきました。

山口(2021)では、日本語の初級文法の導入の授業でPPTを活用する効果について語られています。その中で、「もちろん、PPT以外の教材やレアリアを排除するものではない。例えば「これ/それ/あれ」であれば、教室の中で学習者に絵カードを持たせて導入を行った方が、「これ/それ/あれ」を使う際の自分と相手の位置関係が学習者によく理解されることであろう。

また「~のに使う」の文型では、そろばん、風呂敷などの実物を持参して学習者自身に触らせ用途を確かめさせた方が、学習者の印象に残ることであろう。」と述べています。つまり、PPTだけでなく、レアリアや他の教材をうまく組み合わせていくといいということです

授業活用例

レアリアを最も活用できる例は、先ほど少し述べましたが、「これ/それ/あれ」の練習ではないでしょうか。「これ/それ/あれ」は「みんなの日本語 初級Ⅰ」の第2課に出てきます。まず、レアリアを用いて、「これ/それ/あれ」の位置関係を理解させることが可能となります。

例えば、教師が目の前の教卓を指さして、

教師 : これは机です。

と述べる。また、生徒の本を指さして、

教師 : それは本です。

と言う。そして、遠くにある時計を指さして、

教師 : あれは時計です。

と述べます。このように「これ/それ/あれ」の導入として、レアリアを活用することができます。さらに、応用練習の際に、ただ教科書を見ながら練習するのではなく、レアリアを用いて応用練習を行うと、理解が早いのではないでしょうか。例えば、生徒の本を指さして、

教師 : それは何の本ですか。

生徒 : 日本語の本です。

のような例が考えられます。

また、文法事項の導入だけでなく、例えば場面シラバスにおける「薬局で薬を買う」の場合に、単語の習得で、レアリアを用いて「錠剤」、「貼り薬」、「塗り薬」といった説明をすることもできるでしょう。

日本語教育関連ワードでレアリアと併記されえるワードについて

やはり、「レアリア」について調べるのは、現役の日本語教師が多いのではないでしょうか。現役の日本語教師が、授業にあると盛り上がるようなレアリアを探すのです。

そして、日本語教育能力検定試験との関連について言うと、「レアリア」「生教材」というワードは毎年のように聞かれています。例えば、間違いやすいものは、次のような形です。

 

例えば新聞の実物を学習者に見せながら語彙を教える場合、この新聞は何として使われるか

→レアリア

新聞記事を何も加工せずにそのまま教材として使う時これをなんというか

→生教材

まとめ

今回、「レアリア」について、日本語教育との関連をみてきました。日本語学校での授業では、最近PPTのみを使用して進める形が多いと思われますが、レアリアも活用することで、新しい語彙が理解しやすくなったり、実際に日本で生活している学習者にとっては身近なものが出てきて、授業が盛り上がって記憶に残りやすくなるというような効果も考えられます。

このようにうまくレアリアを授業に組み合わせていくと、授業の幅が広がると考えられます。

参考文献

K・ジョンソン, H・ジョンソン. 岡秀夫(監訳)(1999)『外国語教育学辞典』大修館書店.

千野栄一(1986)『外国語上達法』岩波書店.

内藤寿子(2014)「「日本事情」教材の研究 ―教材としての着物文化―」『駒沢日本文化』

山口薫(2021)「パワーポイントを活用した初級文法の対比的導入について」『南山大学外国人留学生別科紀要』pp.41-50

この記事の筆者
高橋先生の写真
日本語教師養成講座 講師
高橋亜里沙
幼少時、タイや香港といった海外に住んだことをきっかけに、語学に興味を持つ。また、日本語を教える際に日本語を用いて教えるという、直接法について知り、日本語教師に興味を持つ。大学院に通いながら、日本語学校の講師を経験。専門は、社会言語学、日本語教育学。

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