高コンテキストと低コンテキスト文化とは?日本語は高コンテキスト?低コンテキスト?
概要
高コンテキストと低コンテキスト文化はコミュニケーションスタイルの違いを示します。高コンテキスト文化は非言語的手がかりを重視し、低コンテキスト文化では情報が明確で直接的な言葉で伝えられます。ここでは、高コンテキスト(HC)と低コンテキスト(LC)の文化の違いについて詳しく解説します。
コンテキストとは何か?
コンテキストとは、情報が伝達される環境や状況、背景のことを指します。これには、コミュニケーションの場や時期、関与する人々の関係や既存の知識、文化的背景などが含まれます。
コンテキストは、メッセージの意味を理解する際に不可欠であり、特に高コンテキスト文化では、これらの背景要因がコミュニケーションの解釈に大きく影響します。
高コンテキストと低コンテキスト
高コンテキスト(High-Context)と低コンテキスト(Low-C context)文化は、エドワード・ホール(Hall,1976)によって提唱された概念で、異なる文化が情報をどのように伝え、解釈するかを説明するモデルです。これらの文化の違いは、言語の使い方、非言語的コミュニケーション、関係構築の方法に大きな影響を与え、さらに、国際ビジネス、外交、グローバルな交流の場での理解を深めるためにも重要です。
高コンテキスト文化の特徴
高コンテキスト文化のコミュニケーションは非常に暗黙的で、多くが非言語的手段や文脈から読み取られ、話される言葉以上の意味が含まれています。このタイプの文化の特徴として、言葉よりも状況や人間関係が重視される点が挙げられます。人々は相手との長い関係や共有された経験からくる、深い理解を持っており、それがコミュニケーションを形成します。言葉に頼るよりも、文脈、表情、声のトーン、ジェスチャーといった非言語的手がかりが大きな役割を果たします。これにより、情報は間接的に伝えられ、聞き手は話し手との関係やその状況の背景から意味を解釈する必要があります。
日本や中国などアジアの多くの国々では、高コンテキストのコミュニケーションスタイルが見られます。例えば、日本は典型的な高コンテキスト文化です。日本では「空気を読む」ことが重要視され、非言語的な手がかりや相手の感情を敏感に察知する能力が求められます。これは、社会的な調和を保ち、対人関係での摩擦を最小限に抑えるために役立ちます。またはっきりとした拒否よりも「うーん、まあ、考えとく」などような曖昧な返答が好まれることが多く、これは相手の感情を尊重し、和を保つためです。このような高コンテキスト文化では、集団主義が重視され、家族、企業、社会全体で強い結びつきがあり、これが情報の暗黙の理解を可能にしています。
低コンテキスト文化の特徴
一方で、低コンテキスト文化では、明確かつ直接的なコミュニケーションが好まれます。このタイプの文化では、言葉自体が持つ情報が最も重要であり、曖昧さを避けるために具体的かつ詳細な表現が用いられます。コミュニケーションは具体的な言葉に依存し、言語を通じて完全な情報を提供することが期待されます。個々の言葉が持つ明確な意味が重視され、文脈よりもメッセージの直接性が優先される傾向にあります。低コンテキストでは人々は個々の成果や能力を高く評価し、個人主義が強調される傾向があります。
アメリカやドイツなど、西洋の多くの国々ではこのタイプのコミュニケーションスタイルが一般的です。たとえば、アメリカのビジネス環境では、契約や合意事項が詳細に文書化され、双方の期待が明確にされることが一般的です。ビジネス会議での議論も非常に具体的で、何が議論されているかを明確にする必要があります。これにより、誤解を避け、効率的な取引が可能になります。
日本人は高コンテキスト?低コンテキスト?
日本人は一般的に高コンテキストの文化に属しています。このコミュニケーションスタイルでは、言葉よりも文脈や非言語的な手がかりが重要な役割を果たし、相互理解には関係性や状況への深い理解が求められます。
以下、高コンテキストの特徴をあげながら日本の例で説明します。
1. 非言語的コミュニケーションの重視
日本人は、会話中に表情や声のトーン、身振り手振りを重要視します。例えば、同意や不快感を直接的に表現するのではなく、微妙な表情の変化や頷きで感情を伝えることが一般的です。
2. 間接的な表現
日本語には「はっきり言わない」コミュニケーションが多く含まれます。例えば、断るときに「ちょっと…」や「難しいですね…」といった表現で間接的に意思を示します。これは相手に対する配慮として、直接的な拒否を避ける文化的な傾向に基づいています。
3. 文脈への依存
日本では、言葉が使われる背景にある文脈がコミュニケーションの理解を大きく左右します。たとえば、ビジネス会議では、議論の前提となる共有知識や以前の会話、会社の内部文化が非常に重要です。会議の参加者は、これらの背景情報をもとに話されている内容を解釈します。
このように、日本の高コンテキストの文化は、コミュニケーションにおいて言葉以外の多くの要素を重視し、その理解が円滑な社会的交流を支えています。また、日本人同士でも、言外の意味を理解するための高い洞察力と感受性が求められ、これが深い人間関係の構築に寄与しています。
二つのコンテキストが触れ合うと何がおこる?
高コンテキストと低コンテキストの文化間でのコミュニケーションはしばしば障壁に直面します。ここでは、言語使用にに現れる2つのコミニケーションスタイルを対にして取り上げます。
高コンテキスト文化では、自分の主張や意見を明確に言語化しないで、相手に色々と状況を説明し気持ちを伝えながら、相手が結論を推察してくれることを期待する表現方法で最後まで結論を言わない螺旋的コミュニケーションスタイルが見られます。
低コンテキストでは、主張や意見の背後にある理由を倫理的に説明し、相手の理解と同調を求める表現方法で、まず結論を言ってから裏付けを加えるコミュニケーションスタイルがよく見られ、直線的コミュニケーションスタイルと呼ばれます。
高コンテキスト文化の環境で間接的なコミュニケーションを試みると、その意図が正しく理解されないことがあります。逆に、低コンテキスト文化の人々が高コンテキスト文化の環境で直接的すぎると、不快感や不和を招く原因となることがあります。例えば、高コンテキスト文化の日本では、低コンテキスト外国人が日本のコミュニケーションスタイルに適応する際、文脈の理解や非言語的手がかりの読み取りに苦労することがあります。
文化的な違いを乗り越えるためには、両文化の特性を理解し、適切なコミュニケーション戦略を採用することが重要です。たとえば、国際会議やビジネス取引では、異なる文化の参加者がいることを前提に、より包括的で適応性の高いコミュニケーションアプローチが求められます。
日本語教員試験ではどのような形で出る?
今までの試験では音声問題で、学習者側が日本人の先生が婉曲的な表現(高コンテキストの表現)に対して理解できず、結果コミュニケーションがうまくいかなかったという場面について出題されたことがありました。これからも高低コンテキストコミュニケーションの違いによるコミュニケーション上のトラブルについて問う形で出るでしょう。
まとめ
高コンテキストと低コンテキストの文化の理解は、グローバルな視野を持って互いの文化を尊重し、効果的に橋渡しを行うために不可欠です。文化の違いを理解し、それに基づいて適切なコミュニケーション手法を選択することで、国際的な場での成功がより確実なものとなります。これにより、より良い国際理解と協力の基盤を築くことができるでしょう。
参考文献/引用
八代京子・町恵理子・小池浩子・磯貝友子(1998)『異文化トレーニング ボーダレス社会を生きる』三修社 Hall,E.T. (1976). Beyond Culture. New York: Doubleday.
日本語初心者にひらがなの指導をするには? 書き取り練習?
文字を覚えるとはそもそもどういうことか。このようなことを考えたことがあるでしょうか。学校教育で習うものですが、体系的に教えてもらったという記憶が曖昧ではないでしょうか。字を自然に習得し、いつのまにか覚え、自分なりに規則性を見つけて獲得して来ました。そのため、「字を教える」ということを明確に説明できるは人なかなかいないと思います。日本語教師になっても字の教え方ってどうなっているの?となりがちです。字を教えるためのスキルやノウハウ、教材などがあふれています。それが字を覚えるということの一連の流れの、どのような位置づけにあるのかをまとめていきたいと思います。