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アクションリサーチとは、日本語教育では、どのようにアクションリサーチが使われているか

目次

1.アクションリサーチとは?

一般的にアクションリサーチとは、ドイツの心理学者レビンが提唱した、社会が抱えるさまざまな問題のメカニズムを、研究者と個々の問題の当事者が基礎的研究で解明し、得られた知見を社会生活に還元して現状を改善することを目的とした実践的研究のことです。

一方、言語教育においては、横溝(2000)でアクション・リサーチを「現職教師が自己成長を目指して行う自分サイズの調査研究」また「教師が自己成長のために自ら行動(action)を計画して実行し,その行動の結果を観察して、その結果に基づいて内省(reflection)するリサーチ」と定義しているように、専門家としての教師のあり方について言っています。

2.アクションリサーチの例

村越・江原(2018)によると、平成23年に発足した神奈川県立国際言語文化アカデミアは、

質の高い現職英語教員研修の実施しています。そのなかでも、「英語教育アドヴァンスト研修」は,神奈川県で中核的役割を担う高等学校英語科教員の育成を目的とした最も重要な研修の一つであり、この研修は、アクションリサーチによる授業改善を研修の柱としていたといいます。具体的には、ポートフォリオ(さまざまな学習成果物を対象とし、それらを保存・蓄積し、整理・分析をしたり、一覧にしたりすること)の作成等を通し、研修参加者は、自らの実践を振り返り、課題を研修仲間と共有したり、研修担当者と協議を続けたりしながら、授業改善プロジェクトに取り組みました。この結果、、生徒の変化(意識や技能の向上)とともに、この授業改善の取組で教師自身が、同僚教師と目標や指導法を共有し、支え合って授業改善をすることの重要性をあらためて認識したといいます。

このように、アクションリサーチはプロ教師としての成長に大きく貢献しているようです。

 

3.アクションリサーチの効果/メリット

国際交流基金の日本語教育通信「日本語・日本語教育を研究する」の第15回で横溝紳一郎氏は以下のように、アクションリサーチのメリットを話しています。

 

アクションリサーチを実施するメリットとしては、

(1)教師自身の成長

(2)教師一人一人が、教え方についての既成の理論を受け入れるだけの「消費者」ではなく、「教え方に関する情報の発信基地」になれる

(3)教師同士のネットワーク作りに貢献する

(4)周りの人々そして社会の、教師の仕事に対する理解が深まる

(5)教授・学習環境が向上する

(6)教師と学習者の間の信頼感・親密性が増すこと

等が挙げられます

 

4.アクションリサーチの導入方法/やり方

アクションリサーチのやり方について、先に述べた横溝紳一郎氏は以下のように述べています。

 

アクションリサーチは自分の教授活動の中での問題点や関心事(concerns)をトピックとして、そのトピックの何が気になっているのかをできるだけ具体的に明らかにするところから始まります。アクションリサーチでリサーチするトピックは、教師が 教えること・学習者が学ぶことに関するものであれば、 何でも構いません。例えば、「指名の仕方」「発音指導の 仕方」「クラスルーム運営」「成績不良の学生への対処」「ほめ方」「誤りの直し方」「教室活動の工夫」「質問の内容」「学習者の動機づけ」「自律学習の援助法」などなど、教師が関心・興味を持ったものなら何でも、アクションリサーチでリサーチするトピックになります。 トピックがはっきりしたら、そのトピックについてク ラスの中で実際に何が起こっているのかを調べると共に、 そのトピックに関してどのような主張が既になされているのかについての情報をできるだけ集めます。このようなクラス内の調査と先行研究の調査によって得た知識を 元に、問題の改善策や関心事の実施方法を考え、それを実行に移す計画を細かく立てて、実際に実施します。実施した行動の成果を観察・分析し、行動の成果が望ましいものであったかどうかを評価し、望ましいものでなかった場合は、その原因を考察します。この結果、更なる改善策を考えてそれにトライすることも可能です。リサーチが一段落ついたら、そのプロセスと結果を他の教師と共有します。

 

また、佐野(2005)では、アクションリサーチの手順として以下のように述べています。

 

(1) 問題の発見:直面している事態から扱う問題を発見する。

(2) 事前調査:選んだ問題に関する実態を調査する。

(3) リサーチ・クエスチョンの設定:調査結果から研究を方向づける。

(4) 仮説の設定:方向性に沿って,具体的な問題解決の対策を立てる。

(5) 計画の実践:対策を実践し,経過を記録する。

(6) 結果の検証:対策の効果を検証し,必要なら対策を変更する。

(7) 報告:実践を振り返り,一応の結論を出して報告する。

 

このようにアクションリサーチは、教師が授業をしながら、その中でできる研究となります。

 

5.日本語教育能力検定試験においてアクションリサーチと併記されるワードについて

日本語教育能力検定試験において、アクションリサーチは出てきやすいワードの1つです。例えば、「アクション・リサーチを提唱したレヴィンに関係するものとして最も適当なものを選べ。」という問題が出ています。ちなみにこちらの問題は、グループ・ダイナミクス(グループダイナミクスとは、集団における個人の行動や思考は集団から影響を受け、その個人の考えは集団に対して影響を与えるという集団特性のことです)が正解となっています。また、「アクション・リサーチを実施するメリットとして、不適当なものを選べ。」という問題も過去に出題されています。(「教師は既成の理論を受け入れる消費者として機能する。」が不適当)。

 

6.まとめ

今回、「アクションリサーチ」について、解説をしてきました。教師自身が成長していくための1つのツールとして利用してみてください。

参考文献

佐野正之(編著)(2005)『はじめてのアクション・リサーチ 英語の授業を改善するために』大

修館書店

村越亮治・江原美明(2018)「アクション・リサーチをガイドする-現職英語教員研修のための授業改善ポートフォリオ-」神奈川県立国際言語文化アカデミア紀要

横溝紳一郎(2000)『日本語教師のためのアクション・リサーチ』凡人社

横溝紳一郎“アクション・リサーチ ―日本語教師の自己成長のために―”国際交流基金

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