fbpx

作文添削をchatGPTでやってみるとどうなるのか?

目次

作文添削の現場での課題を整理し、ChatGPTの研究評価と実践的な活用方法を分かりやすく解説します。AI時代の日本語教師に必要な評価視点と指導の工夫が具体的に理解できます。

作文添削の課題

日本語教師養成講座を修了して、私が最初に担当したのは日本語学校の作文クラスでした。
毎週、23〜25名分の作文を読み、添削して返却する作業は、想像以上に大変でした。

作文添削の難しさは、単に「量が多い」ことだけではありません。

まず、学習者の日本語がまだ不完全な場合、「何を言いたいのか」が分からないことがあります。意図を推測しながら読む作業は、思った以上にエネルギーを使います。

次に、どこまで直すべきかという判断です。
未習項目も多い中で、すべてを赤で直せば、学習者の紙は真っ赤になります。しかし、直さなければ上達しません。このバランスは本当に難しいところです。

さらに悩ましいのは、「形」と「内容」のどちらを重視するかという問題です。

文法を直すだけでいいのか。
論理性や構成についてもコメントするべきなのか。
それは日本語教育の範囲なのか。

評価基準が曖昧なままだと、時間はいくらあっても足りません。

多くの教師が、「どこまで直すか」という判断に悩み続けているのではないでしょうか。

ChatGPTは作文添削を助けてくれるのか?

では、こうした課題に対して、ChatGPTはどのように評価されているのでしょうか。                                

1)人間教師とどれくらい似ているのか

近年の研究では、文法や語彙などの表面的な誤りの指摘については、人間教師とかなり重なることが報告されています(Lin & Crosthwaite, 2024)。
つまり、形式的な修正に関しては、一定の精度があると言えます。

ただし、どの誤りを優先するか、学習者への配慮のトーンなどについては、人間教師のほうが柔軟で一貫している傾向があります。

2)本当に学習者は伸びるのか

ChatGPTのフィードバックを活用した学習者は、文法の正確さが向上したという報告もあります(Pariyanto & Tungka, 2025)。

しかし同時に、「なぜ直されたのか」を理解しないまま修正しているケースも多いことが指摘されています。

つまり、AIを使うだけで学習が進むわけではありません。

「どう使うか」が鍵になるのです。

3)採点者として使えるのか

自動作文評価(AWE)の研究では、人間評価と高い一致率を示す例も報告されています(Pack et al., 2024)。

ただし、点数の揺れや論理構成の評価の不安定さなども課題とされています。

そのため、多くの研究では、ChatGPTは教師の補助ツールとして使うのが適切だと結論づけられています。

現役日本語講師とChatGPTの添削の違い

では実際に、現役日本語講師による添削とChatGPTの添削には、どのような違いが現れるのでしょうか。
ここでは、初級学習者が書きそうな誤用例を使って考えてみます。

まず、次のような学習者の文を用意しました。

「日本に来てから、アルバイトはたくさん忙しいと思いますから、勉強が難しいなりました。」

この文をChatGPTに添削してもらうと、主に文法や語順など、文章の形を整える修正が提示されます。

 ChatGPTの修正例

「日本に来てから、アルバイトがとても忙しくて、勉強が難しくなりました。」

・ポイント

「アルバイトはたくさん忙しい」 → 不自然
→ 「アルバイトがとても忙しい」「アルバイトが忙しくて」

「難しいなりました」 → 誤用→ 「難しくなりました」

このように、文法や語順を整え、自然な日本語に修正してくれます。

 

では次に、現役講師である私が添削するとしたらどうするでしょうか。

私はまず、学習者が何を言いたいのかを考えることから始めます。

例えば、この文では次のような疑問が浮かびます。

アルバイトが忙しくなったのは、時間がないからでしょうか。
それとも、疲れてしまうからでしょうか。

このように、文の形だけでなく、書き手の状況や気持ちを想像しながら読みます。
なぜなら、文章は「文法」から生まれるのではなく、まず書き手の考えや経験があり、それが言葉として表現されるものだからです。

そのため、状況によっては次のように書き直すことも考えられます。

「勉強する時間がなくなってしまいました。」 あるいは、
「 疲れてしまって、アルバイトの後に勉強するのが難しくなりました。」

さらに、「アルバイトはたくさん忙しい」という部分についても、

 ・アルバイト自体が忙しいのか
・アルバイトにたくさん入らなければならないのか
・それはお金が必要だからなのか

といった点について、自然と疑問が生まれます。
実際の授業では、こうした点を学習者に確認しながら文章を整えていくことが多いでしょう。

このように比較してみると、ChatGPTの添削は文の形を整えることに優れている一方で、人間の教師は学習者の意図を確認しながら文章を再構築していくという違いがあります。

AIによる添削はとても便利なツールですが、学習者の経験や気持ちを踏まえながら文章を作り直していく過程には、やはり人間同士のやり取りが重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

もちろん、AIの添削が役に立たないわけではありません。
短時間で文法的な誤りを見つけて修正してくれるという点では、とても便利なツールです。ただし、使うときにはいくつか意識すると良い点があります。

ChatGPTを作文添削ではどう使ったらいい?

AIは便利です。しかし万能ではありません。

・どの誤りも同じ重要度で修正してしまう

・修正量が多すぎて学習者が圧倒されてしまう

・評価基準が曖昧だと出力がぶれる

・書き手の経験や意図を確認しながら、文章の意味を再構築することができない 

これらを踏まえると、作文添削にChatGPTを使う際に重要なポイントは、次の4点だと言えるでしょう。

1)評価基準を明確にする

「意味が通じればよいのか」
「論理性まで求めるのか」

目的を先に決めておくことが大切です。

2)“完成品”ではなく“学習材料”として使う

修正結果だけを渡すのではなく、

「なぜそこが直されたのか」

を学習者に考えてもらうことが重要です。

3)優先順位をつける

「最低限、意味が通じる範囲で修正する」
「重要な誤りのみ指摘する」

など、指示を具体的に出すことで、学習者の負担を軽減できます。

4)学習者とのやり取りを通して意味を再構築する

AIは、文法や語順の修正には優れていますが、
書き手の経験や意図を確認しながら意味を再構築することは得意ではありません。

そのため、教師は

「本当に言いたかったことは何か」
「どんな状況だったのか」

といった点を学習者と対話しながら確認し、
文章の意味そのものを一緒に組み立てていく役割
を担います。

このようなやり取りの中で、学習者は
「言いたいことを日本語で表現する力」を身につけていきます。

まとめ

AIは、文法や語順などの形式的な誤りを素早く見つけ、修正例を提示してくれる便利なツールです。学習者にとっても、すぐにフィードバックを得られるという点で大きなメリットがあります。一方で学習者の意図や文の意味を丁寧に汲み取るのには限界があります。

AIを効果的に活用するためには、AIが得意ではないことを理解した上で、教師自身が「形式」と「意味」の両方を意識しながら作文指導を設計することがこれまで以上に重要になるのではないでしょうか。

参考文献

Lin, S., & Crosthwaite, P.(2024)“The grass is not always greener: Teacher vs. GPT-assisted written corrective feedback.” System, 127, 103529. 

Pariyanto, & Tungka, N. F.(2025)“ChatGPT as a formative feedback tool: Improving narrative essay writing among EFL students.” Edulitics Journal, 10(1). 

Pariyanto, & Tungka, N. F.(2025)“ChatGPT as a formative feedback tool: Improving narrative essay writing among EFL students.” Edulitics Journal, 10(1). 

日本語教員試験対策が必要な方へ

TCJ日本語教師養成講座では、日本語教員試験の学習に特化したeラーニング教材を開発しました。

令和7年度日本語教員試験での合格率(当社調べ)

・試験ルートの合格率59.7% (全国平均35.9%)

・養成機関ルートの合格率75%(全国平均 69.2%)

 

試験ルートの合格率が全国平均より約20ポイント増となっています。

 

【こんな方におススメ】

・試験ルートで登録・日本語教員の資格取得を検討している方

・現在日本語教師として活躍中で経過措置に国家資格への移行が必要な方

・養成講座受講中で国家試験対策に不安がある方

 

詳しくは公式サイトでご確認ください。↓のリンクをクリック。

この記事の筆者
日本語教師
髙橋琴江
2007年に大学院で日本語教育学を専攻。その後、日本語学校で3年間勤務したのち、韓国の大学専任教員および専門学校講師を経て、2013年に帰国。帰国後は、就労者や年少者を対象とした日本語教育に携わり、企業向け日本語研修にも従事してきた。現在は、企業向け日本語研修や介護実習生向け日本語研修を担当している。フリーランスとしての活動歴は18年。日本語教育能力検定試験合格。2026年5月に登録日本語教員資格を取得。
2023.06.09

日本語教師になって海外で働く

海外で仕事をする。世界に飛び出していく勇気ある人たち。ひとつの生き方として素敵です。

2024.06.17

ルーブリックとは?

「ルーブリック」という言葉は聞いたことありますか。 最近、「ルーブリック」は学校の評価基準を示すために使われることがよくあります。実は、それまでに様々な経緯を経て発展してきました。もともとは宗教的な文書や重要な法的文章で使われていたルーブリックですが、現代の教育評価でも採用されるようになった経緯、そしてその詳細について解説します。

2023.12.19

「うなぎ文」に新提案? 「は」と「が」の基本を解説!

「私は学校に行きました」と「私が学校に行きました」 よく似た文ですが、どこか違いますね。この違いを説明するのにはどうしたらいいでしょうか? この記事では日本語教師が知っていなくてはならない「は」と「が」の違いについてまとめました。

日本語教育のエキスパートによる特別講演会、授業見学会、講座ガイダンス等、TCJ限定のセミナーです。日本語教師に興味がある方や養成講座の受講を検討している方はどなたでもご参加いただけます。

実際に見学したり修了生の生の声を聞いたりすることで、サイトやパンフレットでは伝わらないリアルな空気感を感じていただけます。

授業見学&カウンセリングでTCJクオリティーをご体験ください。オンライン対応も可能です。

デジタルパンフレットを無料で閲覧いただけます。