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授業中に口癖が出ていませんか?先生の言葉は注目されています!

概要

この記事では、日本語教師の「口癖」をテーマに、方言・社会方言・スラングなどが学習者に与える影響や注意点を解説しています。口癖は学習者に真似されやすいため、中立的な日本語を意識しつつ、生の日本語を教材として活用する工夫が重要です。

目次

皆さん、自分の口癖はありますか?

突然ですが、皆さんは自分の口癖がありますか?

自分の職場や友人・家族の間でよく使う表現や自分が住んでいる地域の方言、あるいは自分の性格などが影響し、無意識に使っている言い方が誰でもあるのではないでしょうか。

 

筆者の場合、学生の頃は「だからねー!」が口癖でした。東北の方言で「わかる!そうだよね!」という意味で、今の若者言葉で言う「それな(=自分も同じことを思った)」のようなものなのですが、上京してできた東京出身の大学の友人には全く通じず、「だから・・・何?」と不思議がられてしまいました。「だからね」は方言らしい、ということは知っていましたが、実際に通じないと「やはりそうなのか!」と驚きました。

 

口癖は人から指摘されないとなかなか気がつかないものですが、同じ日本語話者でも話し方は一人ひとり違います。

今回はそんな「口癖」について、考えてみたいと思います。

先生の口癖は、生徒(学習者)が知っている!

口癖というと、皆さんは学生時代に先生のモノマネをして遊んだことはありませんか?一度もしたことないよというあなたも、学年に1人は、先生のモノマネがうまい同級生がいませんでしたか?

特徴のある口癖やジェスチャー、笑い方などは聞いている人にとって印象に残りやすく、相手から覚えられやすいですよね。

 

小中学校でも語学学校でも、はたまた自動車学校などの訓練校でも、学生は教師の話を聞いている時間が長いです。教師が自分で思っている以上に、学生は教師のことをよく見ています。

語学の教師は、学習者にとって「その言語圏・文化圏の代表」のようなもの。日本語教師も当然「日本語話者の代表的なモデル」として見られています。そのため、日本語教師は自分の話し方が学習者にどのような影響を与えるのか、普段から意識しておくことが大切です。

日本語教師が意識すべきことは何?

日本語教師が学生の前で話す際に気をつけなければいけないポイントは何でしょうか?

 

1)方言

たとえば、教師が地方出身者などで方言がある場合。基本的に多くの日本語教科書は共通語である東京方言で書かれており、リスニング用の音声教材なども共通語のアクセントで話されています。教師が方言の話者である場合、語彙の使い方や文末表現、アクセントなどが共通語と異なる場合がありますよね。方言自体は日本語という大きな地図の一部ですので、大切に使って残していくべきもの。ただ、日本語学習者が日本語を学習した先にどこでどのように日本語を使っていくかは人それぞれ。学習者が方言を使用する地域で生活していくのであればいいのですが、そうでない場合も考慮し、様々な学習者が集まる日本語教育の現場では共通語に統一して教えることが一般的です。教科書と教師の話し方に大きな差があると混乱させやすくなるため、教師もできるだけ共通語に統一して話します

 

ただ、学習者が地方在住で今後もそこで生活していくのであれば、実生活で聞くのは方言が中心になります。そういった場合には教師も同じ方言を知っているほうがメリットがありますし、「教科書の共通語はこういう話し方だけど、たとえば私たちの住んでいるところではこんな言い方をしますよね」という形で、比較しながら両方学んでいくこともできます。

また、課外授業として日本語の方言について触れるという目的であれば、大きな教室でもあえて方言を聞いたり話したりする活動を取り入れるのは大いに「アリ」です。TCJでも長期休みなどを利用して学生向けの特別講座が開かれていますが、関西出身の先生が「関西弁講座」を開いており、こちらも大盛況でした。

 

2)性別や年齢の特徴が強く出ることば

日本語には、特定の属性と結びついた話し方があります。性別や年齢、職業などを連想するようなことばや表現、例えば「俺」「わし」「吾輩」「あたし」などの一人称や「~なのよ」「~だろ」「~じゃ」などです。こうした表現は、話者の年齢や性別を想起させる機能があります。

某一大ヒットした曲で「恋人よは旅立つ 東へと向かう列車で 華やいだ町で 君への贈り物 さがすつもり」「いいえあなた 私は ほしいものはないのよ」という歌詞がありましたが、このやりとりだけでもどちらが男性でどちらが女性か分かりますよね。こうした「~だ」「~のよ」など、人の属性と結びつくことばを「社会方言」と呼びます。

日本語のバリエーションの一つとして大変興味深いものなのですが、教師が教室で使う際には注意が必要です。というのも、学習者は教師の話す日本語をそのまま覚えて、教室の外で使ってしまうことがあるからです。こうした社会方言は話者の属性や性質を伝えるため、相手との関係性に影響します。例えば新入社員が社長に向かって話す際に「私」というのか「僕」というのか、「俺」というのかでその人への評価が変わってきますよね。

学習者がそのまま真似して使うと場合によっては不自然になったり、失礼と受け取られたりする可能性があるため、教師は中立的な話し方を心掛けたほうがいいでしょう。

 

 

3)ため口やスラング、子どもに話すような話し方

教師も学習者も、互いに打ち解けてくると砕けた話し方になりがちですが、いわゆる「ため口」や若者言葉、スラングの類にも注意が必要です。教師が使わない場合でも、学習者がアニメや漫画、インターネットから覚えたスラングを多用するケースがあります。趣味の範囲であればいいのですが、そうとは知らずに使っている場合もあるため、相手や場面によっては失礼になることを伝えたほうがいいことがあります。

また、教師が学習者に分かりやすく話そうとするあまりに、子ども相手のような話し方をしてしまうことがあります。聞いている方は馬鹿にされたと感じることもありますし、「なんか」「あのね」「ええっと、これはね」「うんうん」など、教師が何気なく言った相づちを学習者がそのまま使うようになってしまうと厄介です。教室であっても、相手は大人であることを意識して、トーンや抑揚は誇張せず、語彙や文法のレベルだけを調整するようにしましょう

 

・学習者が、教室の外で学んだ表現を過剰に使用していた場合どうするか?

学習者に影響を与えるのはもちろん日本語教師だけではありません。学習者は、多かれ少なかれ、自分が他の人から話されているように、自分自身も話すようになります

筆者が以前担当した学習者では、海外で育って母親とだけ日本語で話していたという学習者が、「うんうん、大丈夫よ」などの表現を多用するケースや、アルバイトをしている学習者や会社で働いている学習者が、「宿題は少々お待ちください」「先生、お疲れ様です/かしこまりました」という表現を使っているケースがありました。

 

最近では技能実習や特定技能などで看護師や介護士など特定の業界で働いている学習者も増えてきました。そうした就労者のレッスンをしていると、初級の若年層の学習者が「あら~~ごめんなさいねえ、ちょっとまってくださいねえ~」とベテラン看護師のような風格になっていることも多いのです(笑)。職場で彼らの指導にあたられている職員の方々の優しさが感じられる部分でもあるのですが、学習者が教師に対してこのような話し方をするとやはり不自然になってしまいます。

 

母語話者は相手との関係性やTPOなどの「社会的なコンテクスト」に合わせて話し方を変えていますが、日本語学習者にとっては話し方の自然な使い分けが難しいこともあります。日本語教師の役割はそうした学習者の社会生活の環境を理解して、必要な介入を行うことです。

「友達の場合は?」「先輩と後輩の場合は?」などといろいろな関係性・場面での会話例を見せたり、「こういう場合はどのように言うか?」などと学習者に考えさせるロールプレイなどの練習も効果的です。

 

口癖が出やすいポイントを紹介

ここでは授業前にチェックしたい、口癖が出やすい部分を見てみましょう。いくつか紹介しますが、これらの表現を使ってはいけないというわけではありません。これらの表現は学習者にとって短くて覚えやすく、印象に残りやすい部分だなと意識しておくだけでも、使いすぎないようにするなどバランスが取れるかと思います。

 

1)ディスコースマーカー(接続詞や副詞など)

会話の中でまとまりをつける際の目印となる接続詞や副詞、短いフレーズを「ディスコースマーカー」と言います。「例えば」「でも」「だから」「つまり」「しかしですね」「ということは」「というのも」「それっていうのは」「基本的には」・・・などなど。話の流れを分かりやすくする機能があります。

2)感嘆詞

「おお!」「えええ!」「すごい!」「いやあ…」などの感嘆詞も、癖が出やすいポイントです。自分がよく言う感嘆詞はありますか?

3)助詞

「~の」「~かな」「~よね」「~さあ(「それはさー」のように伸ばす)」のような終助詞などは特に個人差が出やすいです。

4)そのほか(フィラー・文末表現など)

「えー」「あー」「えっと」などのつなぎ言葉や「~って感じです」「~というわけですね」「~んですけどね」など。

こうしたポイントで自分の話し方を振り返り、癖がないか考えてみましょう。

口癖を含む会話は生教材(レアリア)になる!

ここまで読んで、「先生らしく間違いなく話さないと…」と思われた方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。実生活で教科書のように話している日本語母語話者はいませんし、学習者のほうも、日本人が人によって話し方が違うことや教科書と教室の外の日本語が違うことは理解しています。実際には多くの学習者が、リアルな日本語を聞いたり話したりしたいという気持ちを持っていることがほとんどです。

普段は学生に合わせてやさしい日本語を話している先生が、先生同士で話しているのを聞くと新鮮に映ることもあります。日本語母語話者が話すリアルな日本語はレアリア(生教材)として活用すれば、学習者にとっても刺激になります

実際に、生の日本語に触れるための課外活動として、ボランティアで日本人のゲストスピーカーを読んで交流会をしている学校などもありますし、大学の日本語別科などでは構内にいる日本人学生にインタビューするというタスクを授業で行っているケースもあります。

大切なのは「使い分け」です。授業では中立的な日本語を使い、雑談の中では少し自分のカラーを出してみるなど、メリハリをつけて話してみましょう。

まとめ

普段はあまり意識しない自分の「口癖」。みなさんの話し方、そして周りの人の話し方はいかがでしょうか。今回の記事が少しでも、振り返るきっかけになれば嬉しいです。

自分の口癖って何だろう?と気になった方は、ぜひ身近な人に聞いてみてください。自分の言語生活について、新たな発見があるかもしれません。

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この記事の筆者
TCJ・コラム執筆者写真
TCJ日本語講座 非常勤講師
大野 綾香
大学で日本語教育を学んだのち、日本語教育能力試験に合格。日本語学校で留学生の大学受験指導・プライベートレッスン、教材出版等を経験後、2023年よりTCJにて留学コース・ビジネスパーソンのプライベートレッスンを担当。好きな分野は地域日本語教育、音声学。

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