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日本語教育におけるペアワークの有効的な使い方は?

概要

実際の現場で、授業で扱う文型を提示し、基本的な練習を行った後、ペアで発話練習などをさせたりすることがあると思います。今回はペアワークのメリットや取り入れ方を中心にお伝えいたします。

目次

ペアワークとは?

まずペアワークとは、学習者が2人1組になって会話や課題に取り組む学習活動のことです。授業中に「文型練習」「会話作成」「情報交換」などを行う際に広く用いられています。教師からの一方的な説明ではなく、学習者が互いに考え、話し合いながら言語を使う場になる点が大きな特徴です。ペアワークを行うことで、学習者が文法項目の活用だけでなく、パートナーを支援したり、会話内容を発展させたりすることもあります。

また、一口にペアワークと言っても、その内容やねらい、学習者の関わり方は多岐にわたります。練習内容や学習者のレベル、授業の目的によって、ペアワークの種類も変わります。例えばクラスでペアワークを行うのであれば、以下のような形態があります。

1)一斉会話ペアワーク

クラス全体を2人ずつに分け、全員が同時に会話を行う形式です。メリットとしては、学習者一人ひとりの発話量が多くなり、限られた時間の中でも練習できる点が挙げられます。

ただ、デメリットとしては、クラス全体で発話するため、教師が各ペアの発話を観察しづらい点があります。

2)ペア指定のペアワーク

クラスをAグループとBグループなど2つに分け、Aの一人がBの一人と会話をする形式です。教師が順番にペアを指定しながら進め、指定されなかったその他の学習者は聞き手に回ります。

メリットとしては、一度に話すのは2人だけなので、教師が活動を観察しやすいことが挙げられますが、一斉型に比べて、学習者一人ひとりの練習量が少なくなるというデメリットがあります。

3)学習者発表型ペアワーク

スピーチの発表形式に似ており、Aの学習者がBと対話し、それをクラス全体に示す形でも使われます。

ペア指定のペアワーク同様、教師がぺアの活動を把握しやすい反面、学習者一人ひとりの発話数は減るという面もあります。

4)グループ内ペアワーク

クラスをいくつかのグループに分け、グループ内でペアワークを行う方法です。

メリットとしては学習者一人ひとりの発話量が、1)2)3)よりも多いことにありますが、教師が学習者それぞれの活動を把握するのが難しくなるというデメリットがあります。

学習者の活動内容を把握しつつ、発話量をどのくらい増やしていくのかバランスを取ることが大切です。

ペアワークを行うメリットは?

ペアワークにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

例えば以下のようなメリットがあります。

■ 発話機会の増加

教師が学生に当てて答えてもらう形式に比べて、発話機会が増えるでしょう。
また学習者の練習量や発話量の増加に伴い、学習者同士の協力による相互作用が活発になったり、実際のコミュニケーションに近い状況で練習できます。

■ 学習意欲の向上

学習者の自由な発想を促すため、受け身にならずに自ら学ぶ姿勢を身に付けてもらうこともできるでしょう。ペアワーク後に感想で「役に立った」「楽しかった」と肯定的な回答をした学習者も多くいたという調査結果もあります。

■ 協働による気づき

ある調査では、クラスメートから「良いパートナー」と評価された学習者が、相手の文法力や発話内容に合わせて状況を提案したり、必要な語彙を提示したりする姿が観察されたそうです。ペアワークを通じて、学習者が互いに支え合いながら学ぶことができるのもメリットの一つでしょう。

ペアワークの取り入れ方

では実際にペアワークをどのように授業に取り入れたら良いでしょうか。学習者にとって意味のある活動にするために以下の内容を考慮すると良いでしょう。

■ 活動の目的を明確に

ペアワークに入る前に、その日のターゲットとなる文型や表現、達成目標を明示しましょう。そうすることで、学習者は何に取り組むのかを念頭に置いて練習ができるようになります。

■ ペアの組み合わせに配慮

学習スタイルを踏まえた組み合わせは、活動の効果や満足度に影響するため事前に考えておきましょう。特に初対面同士や、性格の異なる学習者同士のペアにも配慮が必要です。

■ 適切なサポート

活動中は教師が巡回し、文法ミスへのフィードバックや、会話が止まっているペアへの声かけを行うことで、活動の質を上げることができます。机間巡視の際に、自然に訂正(リキャスト)するのも良いでしょう。

■ ICTの活用は慎重に

スマートフォンやタブレットを使ったペアワークは便利ですが、SNSの通知などで注意が逸れたり、画面ばかり見て「顔を合わせた対話」が減ったりするというデメリットもあります。使用方法には一定のルールを設けると良いです。

いずれにしても教師による一斉型から、学習者発表型、グループ内ペアワークといった自由度の高い形式へ、段階的に進むように考えておくと良いでしょう。クラスの混乱を抑えつつ、学習者の自主的参加を高められるように、そのクラスにとって、どのような形式のペアワークが良いか考えておくことが大切です

ペアワークがうまくいかないときの対処法

■ 発話が極端に少ないペアが出ることも

発話が少なかったからといって、必ずしも失敗とは限りませんが、相性や学習スタイルの違いが原因で活動がうまく進まないこともあります。発話内容だけでなく、非言語的な反応(うなずき、視線、表情)にも注目することが大切です。

■ 成績優秀者ほど否定的な傾向も

ペーパーテストの点数を重視する学生ほど、ペアワークに対して否定的な意見を持つ傾向もあるようです。試験勉強など自分自身で学習をすすめたいという学習者に多い傾向であるとも言えます。ペアワークの知識の確認以上の意義、たとえば将来に活きる「協働力」や「対話力」について事前に説明しておくと拒否反応が軽減するかもしれません。

まとめ

ペアワークを単に2人で話す活動と捉えるのではなく、学習者に多様な気づきを与えられたり、日本語を自分のものにしてもらうという意識を持ちながら、授業を組み立てると良いのではないでしょうか。

一人ひとりの学習スタイルや反応に目を配り、時に導き、時に見守りながら学習をサポートしていきましょう。

授業の中に「話す楽しさ」「伝わる喜び」を取り入れるために、ペアワークをぜひ活用してみてください。

 

引用

・河内 彩香, 増田 真理子,中原 なおみ(2013)「ペアワークを中心とした会話練習におけるインターアクション観察(2)― 「プレインフォーム」の学習プロセスを観察する一環として―」

・河内 彩香, 増田 真理子, 中原 なおみ, 竹山 直子(2014)「ペアワークを中心とした会話練習におけるインターアクション観察(3)―サンプル会話の「談話構造」「ターゲット文型」のタイプが活動に与える影響―」

・国際交流基金 日本語教育通信 第32号 p22 海外日本語教育Q&A

https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/tsushin/bn/dw_pdfs/tushin32.pdf

・中原 なおみ, 増田 真理子, 河内 彩香(2013)「ペアワークを中心とした会話練習におけるインターアクション観察― 活動の各段階で、どのような学びが起こっているのか―」

・中原 なおみ, 河内 彩香, 藤田 朋世, 増田 真理子(2016)「ペアワークを中心とした会話練習におけるインターアクション観察(4)―ペアワークで学習者はパートナーをどうアシストしているか―」

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この記事の筆者
TCJ日本語講座 非常勤講師
蔭山 佑佳
教育IT業界にてWebマーケティング業を経て、国内日本語学校で非常勤講師、公的機関で日本語教育に携わったほか、技能実習生などにオンラインで指導を行う。現在はビジネスマンや児童に日本語を教えており、日々幅広い年代の学習者と向き合う中で、日本語指導の奥深さを感じている。学習ストラテジーや自律学習に興味あり。

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