理由表現とは?「から・ので」の使い分け
概要
今回は理由表現の「から」と「ので」についてです。意味は”because”で、どちらを使ってもOKだと思っていませんか?しかし実は、コミュニケーションに欠かせない重要な使い分けがあるのです。この記事では2つの違いや教える際のポイントを見ていきましょう!
理由表現とは?
「体調が悪いので休みます」「おいしかったからまた食べたい」のように、理由を表す表現を「理由表現」といいます。
日本語にはいろいろな理由表現があります。「ちょっと最近忙しくて・・・」の「て」や「天気もいいし、出かけようか」の「し」、「ちょっと会議が長引いたもんで」なども理由表現にあたります。「体調不良のため」「雨天により延期」など書き言葉でのみ使われるものもありますね。
今回は初級で習う主要な理由表現「から」と「ので」について解説したいと思います。
「から」と「ので」の違いを例文で比較
「から」と「ので」にはどんな違いがあるでしょうか。
文を見比べて考えてみましょう。
【から】
・明日も早いから、今日は早く寝ようかな。
・昨日は雨だったから、家で本を読んだ。
・危険ですから飛び込み乗車はおやめください。
【ので】
・明日も早いので、今日は早く寝ましょう。
・昨日は雨だったので、家で本を読みました。
・危険ですので飛び込み乗車はおやめください。
それぞれの文で「から」と「ので」を入れ替えても間違いにはなりませんが、印象としては「から」のほうが簡潔で、事実がはっきりと伝わります。一方、「ので」は「から」に比べるとやや丁寧で、相手に配慮して伝えているような印象になります。仕事の場面や敬語を含むやりとりでは直接的な表現よりも婉曲表現の方が好まれるため、「ので」がよく使われます。
ただこの点について、筆者は世代差もあるのではないかと感じます。比較的若い世代の方が、より「ので」の使用頻度が高いように思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。
主観性や丁寧さはどう変わる?
言語はコミュニケーションの道具ですから、ことばの使い方には話者と聞き手の関係性や感情が大いに関係してきます。
下の場面で「から・ので」のどちらを使うか考えてみましょう。
1)(独り言で)「これ欲しいけど、お金ない( )やめようかな。」
2)(友達と)「ねえ、暑い( )アイス食べない?」
3)(小学校の先生が1年生の児童に)「ここは職員室です( )、静かにしてくださいね」
4)(カフェで会社の先輩と後輩が)「お、今日はアイスコーヒーですか。いつもホットじゃない?」「はい。今日は暑い( )アイスにしました。」
5)(会社の会議で取引先に)「我が社としましては、ぜひこの方向で行きたいと考えております( )、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。」
6)(店員が客に)「お客様、申し訳ございません。ただいま満席です( )、こちらにお名前をお書きになってお待ちください」
解答例:1 から 2 から 3 から(ので) 4 ので(から) 5 ので 6 ので
「から」「ので」どちらも使える場合もありますが、一般的に「から」のほうが主観的で直接的な印象になりやすく、「ので」のほうが婉曲的な印象になります。上の例では、上に行けば行くほどカジュアルな会話、下に行けば行くほど丁寧さが求められる会話になっています。おそらく、独り言や友達との会話では「から」、接客やビジネスでは「ので」のほうが使用頻度が高いのではないでしょうか。
日本語教育で教える際に知っておきたいこと
「から」「ので」の学習順
一般的に初級ではまず「から」を学習し、後から「ので」を扱うことが多いです。理由としては、
・「から」は直接的で簡潔な文と相性がよく制約も少ないため学習歴が浅い学習者にも導入しやすい
・「ので」には「配慮」という概念が入るため、文法学習が進んで「てもらえませんか」などの配慮表現や敬語を習ってからの方が練習がスムーズにできる
という点があります。
実際の日常会話では「普通形+から・ので」のほうが自然かもしれませんが、初級では「です・ます」の丁寧形から習うのが一般的であり、初めて理由表現を習う段階ではまだ普通形を学習していないことが多いのです。普通形は「辞書形・た形・ない形+なかった」の総称なので、この4種類の活用形の学習を終えるには、もう少し時間がかかります。
そのため、流れとしては
1)「明日は休みですから出かけます」のような「です・ます+から」を先に導入
2)その後普通形を学習して「休みだから出かける」などより自然でカジュアルな形を練習
3)「ので」を学習して「暑いので大変ですよね」など、やり取りの中で柔らかい表現を使えるようになることを目指す
4)必要に応じてビジネス日本語などで「~ですので」「~ですので」を扱う
の形で学習することが多いです。
なお、4の「~ですので/ますので」はビジネスやサービスなど使用場面が限定的なため、初級ではあまり扱いません。(※ただし初級でもサービス業の従事者やビジネス日本語をすぐに必要としている学習者の場合は「ですので・ますので」を使った敬語表現をはじめから扱うこともあります。)
学習者のよくある誤用と指導法
よくあるケースを紹介します。
1)接続の誤用
「✕好きから(好きだから)」「✕行くなので(行くので)」など接続の間違いは頻出です。導入の際よく口慣らしをして、その後も間違えたときにその場で軽く直して言い直すなどの練習をはさんで修正していきます。
2)中級・上級になっても、「~ですから」が抜けない
文型積み上げで学習してきて「ですから・ますから」に慣れていてそれを多用しているケースです。(例:「疲れた!忙しいですから。」)
3)終助詞や「~んです」など、別の文法と合わせた使い方の誤用
例:「✕今日本語を勉強しているんですから、いっしょに話しましょう」「✕今受験なんですから、がんばっています」など、「んです」との組み合わせの誤用がよく見られます。また、日本人が使っている「〜だからさ」や「〜だからね」といった表現を聞き覚えたものの、それを目上の人などに使ってしまっているようなケースもあります。
4)理由と結論が反対になる・「なぜなら」や「だって」を多用する
母語で「結論→理由」の順で話すのに慣れていると「寝ますから疲れました」のように結論と理由が反対になってしまうことがあります。また、「~から」「~ので」ではなく「結論+なぜなら~」や「結論+だって~」といった表現を多用することがあります。
その場で修正ができる場合は指摘をして言い直してもらったり、暗示的に見せて気づきを促す方法もあります。
例1
学生「アニメが好きのでよく見ます」
教師「アニメが好きなので?」
学生「あ、アニメが好きなのでよく見ます」
例2
教師「アニメが好き・・(板書の接続の部分を見せながら)ので?」
学生「あ、アニメが好きなので」
クラスの前で修正すると心理的な影響もあるので、「よくある間違い」としてクラス全体で確認するのも手です。1対1のレッスンでは細かくその場で誤用への対処ができる一方、なかなか癖が抜けなかったり複数の誤用が混ざっていることも多く、筆者も試行錯誤しながら学習者と一緒に取り組んでいます。学習者に誤用への気づきを促し、「なぜそうなのか?」を理解できるようにし、練習していく、というプロセスは共通しているのではないかと思います。
教える際に押さえるべきポイントを整理!
【それぞれの基本的な意味と接続の整理】
接続の違いを比べてみましょう。
接続ルールはほとんど同じですが、な形容詞と名詞の場合のみ「だから」「なので」と形が変わります。それぞれのニュアンスの違いをまとめると、以下のような特徴があります。
1)普通形+から
直接的、主観的。親しい間柄や内言に使われることが多い。書き言葉にも使われる。
2)丁寧形+から
直接的だが丁寧さもある。書き言葉にもよく用いられ、やや説明的。
3)普通形+ので
婉曲的で配慮のある表現。丁寧なお願いや事情説明などにもよく使われる。
4)丁寧形+ので
サービスやビジネスなど一部の場面で使われる丁寧な口語体。
【その他注意すべき違い】
「から」は「〜からだ。/~からです。」のように文末に置くことができますが、「ので」はできません。(例:「✕なぜなら、好きなのでです」→「〇好きだからです」)
また、「ので」は論文など客観的な事実を記す書類などではあまり使われません。
また、「ので」は婉曲的な意味合いがあるため、後ろに強い意志表現(命令形や禁止形など)が来ると不自然になります。
〇「おい!そこは危ないから降りろ!」
✕「おい!そこは危ないので降りろ!」
より硬い書き言葉では「ため」がよく用いられます。
例:
(休暇届)「△休暇理由:私用なので。」→「〇私用のため」
(問診票)「△熱が続いていますから。」→「〇熱が続いているため」
「から」と「ので」の使い分けや「配慮表現」の感覚をどう伝えるか
学習者は「時間を間違えましたから遅れました」「やり方を知りませんから間違えました」「店長はいませんから待ってください」「間違えましたからすみません」などと言うことがあります。本人は説明や謝罪をしているつもりなのですが、聞いている方にはどこか他人事のような、失礼な印象を与えてしまいます。
日本語の会話では、婉曲的に表現して相手に理解を求めることが丁寧さの表れと考えられることが多いです。「から」は理由そのものに焦点が当たる表現で、直接的な因果関係を強く感じさせる効果があるため、「原因は私ではなく○○という事実の方である」というニュアンスを感じさせてしまいます。一方、「ので」の方は理由と結果のつながりを明示しているというよりは婉曲的に出来事全体に言及して、相手に理解を促す働きかけ表現のような機能を持ちます。
この点を理解してもらうために、筆者が導入やフィードバックをする際は以下の点に気をつけています。
1)学習者の例文や発話に対し、「この文を教室の外で使っても学習者が不利益にならないか」を基準に誤用修正を考える
2)「から」「ので」を一律に”because”と訳して同じであると説明しない
3)「から」「ので」の例文の比較をし、講師が表情をつけながら二つの文を言って見せたり、気持ちの説明を加えたりして配慮の有無を理解する
文化や生活の中で身に着ける感覚の部分も大きいため説明だけで理解することはなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ実際の例を見せながら体感を持ってもらえるようにしています。
まとめ
今回は理由表現「から」「ので」を解説しました。細かく見ていくといろいろな使い分けがあり、筆者も頭が痛くなりました。
これから日本語教師を目指される皆さんも、自分が理由を言うときにどんな表現のバリエーションを使っているか?自分なら学習者にどう伝えるか?をぜひ考えてみてください。
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