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日本語の教育方法に精通しているだけで足りる?

上記タイトルの基になった資料は、文化庁サイトにある「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」です。ここには、日本語教師が今後求められていくであろう姿が書かれています。

中でも気になった一文は以下のものです。

「留学生に対する日本語教師に必要な教育内容については、日本語の教育方法だけではなく、対象や日本語教育の背景となる法務省告示教育機関や留学生施策、在留資格等に関する知識が必要である」

留学生施策について、在留資格について知っておくべきとあります。

日本語学校にいる間の在留資格は「留学」。

大学や専門学校へ進学することなく日本に残ることを希望する場合、学生が次に切り替える在留資格は「就労」です。

目次

学生が許可される可能性がある就労ビザは4種

就労ビザは職務内容によってたくさんの種類があります。研究者や医者、教授などの特殊なビザを除き、母国で大学を卒業した、もしくは就労経験がある学生が取るビザの多くは、大きく分けて4種です。

技能・人文知識・国際業務ビザ

就労ビザのほとんどはこのカテゴリーに該当します。通訳、IT技術者、エンジニアが代表的ですが、外国人ならではの感性が生かされるデザインや室内装飾に関する職種なども含まれます。学歴もしくは実務経験が問われます。

学歴については、大卒以上を証明する学士・修士・博士であること、日本の専修学校の専門課程を修了したことを証明する専門士、高度専門士であることなどです。

母国で高卒資格の学生がこのビザを得るためには、日本の大学もしくは専門学校に入る必要があります。しかし、10年以上の実務経験があれば学歴は問われません。

翻訳、通訳、デザイン、商品開発などの職種は3年以上の実務経験があればよいとされています。

技能ビザ

中華・フレンチ・イタリアンなど、外国料理のコックが代表的です。その他、外国特有の建築技能者やワインソムリエなどで熟練した技能を持っている外国人も該当します。

技能ありきのビザなので、なんといっても十分な実務経験が問われます。

例えばコックであれば10年以上です。しかし、タイ料理人については5年以上でも可など若干の違いがあります。ちなみにソムリエについては5年以上です。

台湾人の学生で、「母国で日本料理のコックを5年していたから、その経験を生かして日本でも和食のレストランで働きたい」という学生がいました。中華料理ならまだしも日本料理です。しかも年数も不足しています。

「日本人ではなく外国人を雇用しなければならない理由が問われるビザなので難しいのでは?」という話をしたことを思い出します。

介護ビザ

2017年から始まったビザです。“介護業界の人手不足を解消できるか?”と当時は大きな話題になりました。

しかし、いくら人手がほしい状況でも、日本語力不足の状態で簡単に取得できるビザではありません。

ビザ要件として「介護福祉士」という国家資格を取得していなければいけません。

つまり国家試験に合格しないといけないわけで、介護に関するたくさんの専門用語や法律などすべて日本語で理解していなければなりません。

介護ビザ取得に至るルートは3つあります。

  • 3年以上の実務経験の後に受験するルート
  • 福祉系高校で勉強した後に受験するルート
  • 専門学校や大学などで勉強した後に受験するルート

フィリピンやインドネシア、ベトナムの学生などで、介護の仕事で就労ビザを取得することを希望する学生には、介護系の専門学校や大学を勧めるとよいでしょう。

特定技能ビザ

2019年から始まったビザです。即戦力になる程度の技能がある場合に該当する就労ビザです。技能だけでなくN4程度の日本語力も問われます。

特定技能ビザは1号と2号に分かれています。

1号は介護業、ビルクリーニング業、鋳造・金属プレス加工・溶接などの製造現場、建設業、自動車整備業、外食業、宿泊業など14業種が対象です。ビザの期限は5年なので5年後には帰国しなければいけません。また、家族の帯同は許されていません。

アルバイトですでにこういった職種に就いている学生であれば、このビザへ切り替えたがる可能性は大いにあります。学費を払わなくてよいですし、フルタイムで仕事ができるのですから。

2号については、1号よりもさらに熟練した技能であることを求められます。また、何度も更新ができるので、永住権の取得も可能です。家族の帯同も許されています。

2019年5月現在、2号で許されている業種は、建設業と造船・舶用工業の2種です。

まとめ

文化庁の資料を読む以前から、日本語教育の現場ではこういったビザに関する知識の必要性は常々感じてきました。特に目的や計画もなく来日する学生もいますが、多くの学生たちは進学や就職など明確な目的を持って来ています。

とはいえ、異国での生活の厳しさからつい勉強を怠けてしまったり、目標を見失ったりといったことがないわけではありません。

そんなとき、滞在に必要なビザに関する具体的な話ができることによって、学生の勉強へのモチベーションを上げることができます。進路に関わるビザについての知識があれば、学生からの信頼も得やすいでしょう。

短い期間で関わり日本語を教えておしまい!ではなく、将来のことを含めて学生一人ひとりを大切に考えていることの表れが、異国に住む外国人にとって何より大切な「ビザ」の知識といえるでしょう。

この記事の筆者
東京中央日本語学院(TCJ)
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